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壮一郎は十年前のことを思い出していた。そこには現在の壮一郎の金融街へのスタンスを決定付けるルーツが隠されていた。そしてそれはアセットの秘密とも関係していた。一方、公麿は、真朱という存在を前に、自分にとってかけがえのないものとは何なのか改めて考え始めていた。そんな中、現実世界に未曾有の危機が刻々と忍び寄っていた。
 

「経済予測が必ず当たるエコノミストはいますか」--。
昨年春、本作の中村健治監督に初めてお会いした際、開口一番、こんな質問を受けた。

答えはもちろんノー。経済とは人間の営みすべてを数値化したものにほかならない。1人のエコノミストの予測が必ず当たるなら、われわれ経済誌の出番はない。

「経済をテーマにしたアニメを作りたい」。中村監督からこんな構想をお聞きしたとき、筆者は金融広報中央委員会あたりが作りそうな啓蒙番組を漠然と考えていた。今にして思うとまったくの誤解であるが。

2度目にお会いした際に、プレイヤーを企業に見立てて、技を繰り出したり攻撃を受けたりするごとに資産と負債の数字が変動するというコンセプトを説明していただいた。現行バージョンよりも複雑で、しかも図示されていなかったので、正直ピンとこなかった。

雑談中にアニメ全般の話題になった。筆者が何気なく「ノイタミナでは、『墓場鬼太郎』のオープニングの映像が格好いいですね」という話をしたところ、中村監督はこう答えた。「それ、僕が作ったんですよ!」。

これには驚いた。墓場鬼太郎の斬新でポップなオープニング映像は、何度も繰り返して見るほど大好き。「週刊東洋経済」の特集記事レイアウトの参考にさせてもらったこともある。

その後、中村監督の代表作『化猫』や『モノノ怪』をDVDで視聴して、描かれる世界観に圧倒された。その監督の最新作なのだから、単なるお勉強アニメのはずはない。今まで見たこともないような作品になるに違いない。真正面から向き合わなければと思った。

筆者は監修という立場で『C』に関わらせていただいている。経済・金融に関係するセリフや設定のチェックを主に担当している。

でも、中村監督から「アイデアがあれば、何でも言ってください」というありがたい言葉をいただいた。これを真に受けて、あつかましくもいろんなことを口走って、その都度スタッフのみなさんの貴重な時間を奪っているような気がする。

筆者のようなアニメ門外漢のアイデアが採用されるほど甘い世界でないのはむろん承知の上。それでも番組を見るたびに、「ひょっとしたら、このシーンはあのときの議論が元になっているのでは?」と空想するのが、現在のひそかな楽しみである。