日本への〝C〟の連鎖をダークネスカードにより防いだ壮一郎だったが、〝C〟はアメリカの金融市場に弾き返され、再び日本へ迫る。二度目の連鎖を防ぐため、壮一郎はためらい無く再度ダークネスカードを使う。それに気付いたサトウは、阻止するための方策を公麿に授ける。チャンスは決済までの僅かな時間。壮一郎と公麿達の最後の戦いが始まる…。
「ヘリコプターマネー投下!」
竹田崎が空から札束をばらまいた。経済学の世界でも「ヘリコプターマネー」といわれている現象がある。ヘリコプターで上空から現金をばらまくように、景気が悪化したらお札を刷って国民に現金をばらまけば景気が回復するという考え方である。
そんなバカなことは現実にはありえないと思う人もいるだろう。だが、最近話題になっている震災復興国債の日銀引き受け論にしても、日銀は国債購入代金を新札発行で賄うという点ではヘリコプターマネーと同じ。このようなお札のばらまきを続けていると、いずれインフレーションが止まらなくなる。
「インフレ=物価上昇」である。だが、外国の通貨から見れば物の価値が変わっていないとしたら。むしろ「インフレとは自国通貨の価値が下がること」と考えるほうがわかりやすいかもしれない。それはお金の信用が失われることでもある。
信用を崩すのは案外たやすい。戦前に蔵相の失言がきっかけで東京渡辺銀行が破綻、さらに大手財閥の鈴木商店まで破綻に追い込まれたのは有名な話。戦後も女子高生の列車内での雑談がきっかけで信用金庫から短期間に数十億円が引き出されるという取り付け騒ぎが起きた事例もある。人々が不安な心理状態に置かれていれば、ほんの一押しで事態は大きく動き出すのだ。
もしあなたが自分の貯金を外貨預金に切り替えたとする。この動きが連鎖して1400兆円の個人金融資産が一気に海外にシフトしたら円や国債が暴落しかねない。何かのきっかけでこのような事態が起きてもまったく不思議ではないはずだ。