ディールをコントロールする術を獲得しようとする公麿。一方、壮一郎は自己の理念のもと、金融街内で椋鳥ギルドという互助組織の勢力を拡大していた。その理念とはディールの現実への影響を最小限にすること。公麿は自分の身の回りへの影響が心配だったが、その理念を聴いてなお、とるべき道を迷っていた。何かが引っ掛っていた。そして一介の大学生・公麿に目をつける壮一郎の目的とは一体何なのか。
「この現実以外にもあんな現実が確かに存在しているということだ」
壮一郎が金融街について語ったセリフである。 アニメだけの絵空事ではない。現実世界の「金融街」、すなわち株や為替の取引市場もまた、もう一つの現実なのである。
デリバティブという言葉を聞いたことがあるだろう。現実の金融取引から派生した取引のことである。本来は、現実の金融取引を補完するのが目的だ。だが、手持ちの資金を大きく上回る高額取引が可能となる仕組みを利用して、投機マネーが一気に流入した。
ただし、現実の取引を超えるリターンが得られる反面、リスクも大きい。2008年のリーマンショックを引き起こした犯人がサブプライムローンであることはよく知られている。そのサブプライムローンの残高は1.3兆ドル(120兆円)にすぎなかった。この程度の金額であれば、大きな問題にはならなかったかもしれない。しかし、サブプライムローンを使ったデリバティブ商品の想定元本はなんと60兆ドル(5400兆円)にも達していたという。
日本のGDPの10倍、アメリカのGDPの5倍近い市場が、いつの間にか電脳市場に現れて、破綻した。それは、現実世界にも巨額の損失を与えてしまった。
「C」の金融街で繰り広げられるバトルが、公麿たちが住む世界にどのような影響を与えていくのか。ドラマはいよいよ佳境を迎える。